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「解体工事の裏側!重機の種類とその役割」ビルや橋の解体に使う重機の特徴や工法を解説

建機

2025/07/17

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「解体工事の裏側!重機の種類とその役割」ビルや橋の解体に使う重機の特徴や工法を解説

解体工事と聞くと、「ただ建物を壊すだけ」と思われがちですが、実際はそう単純ではありません。現場では、構造物の種類や周辺環境に応じて、緻密な計画と多様な重機が投入され、解体が進められています。

中でも、重機の存在はまさに現場の主役といっても過言ではありません。

本記事では、解体工事の現場で使用される重機の種類とその役割、主に用いられる解体工法や注意点について解説します。
    この記事でわかること
  • 解体に使われる重機の役割・種類
  • 解体で使われる重機の解体用アタッチメント
  • 建物別の主な解体工法

解体工事に重機が欠かせない理由とは?安全性と効率性の両立

解体工事では、安全かつ効率的に建物を取り壊すために欠かせないのが重機です。人の手だけでは対応できない重量物の処理や、高所作業、鉄筋コンクリートの破砕など、すべての工程で重機が活躍しています。

特に、規模の大きい構造物の解体にも重機は不可欠です。ビルや橋といった大規模構造物では、手作業だけでは対応しきれない場面が多く、現場ごとに適した重機の選定と運用が求められます。

ビルや橋梁といった大規模構造物の解体では、使用する重機の選定が工事の成否を左右すると言っても過言ではありません。

また、重機の導入により、作業時間の短縮、作業員の安全確保、コスト削減などの得られるメリットは多いです。

解体現場で使われる重機の種類・サイズ・アタッチメントまとめ

解体工事に用いられる重機はバックホウが主力となります。

標準仕様のバックホウでも一定の解体作業は可能ですが、より効率的かつ安全な作業を行うためには、解体仕様のバックホウが採用されます。

解体重機の代表的なメーカーとしては、専用機のラインナップが豊富なコベルコ建機が知られています。

建設現場での汎用性も高いですが、解体専用機としてカスタマイズされているモデルは、耐久性・安全性・作業効率が格段に向上しています。

解体仕様のバックホウは、安全性と作業効率の両立を実現するため、落下物からオペレーターを保護するFOPS(落下物保護構造)などの安全設備の実装や、多種多様なサイズ、アームの長さ、アタッチメントが用意されています。

解体現場によっては、安全対策の一環で、キャノピーにガードが付いている重機しか入れないという現場も増えてきました。キャノピーのフロント、側面、上部にガードが付いた、いわゆる「三面ガード仕様」という機械が「解体機」と呼称されます。

解体重機の種類

代表的なのは、あらゆる現場で活躍している「油圧ショベル」です。他にも、高層ビルの上層階を解体する際に用いられるクレーンや資材やガラを運ぶホイールローダーなども現場によっては導入されます。

特に油圧ショベルは、アタッチメントを交換することで、破砕、切断、吊り上げといった多様な作業をこなす万能機械として重宝されています。

解体機とひとくちに言っても、その種類や規模はさまざまです。例えば、4〜5階建ての高層建物を解体する際には、大型のロングリーチ仕様機が必要になります。一方で、2〜3階建ての比較的低い建物では、アームが長すぎると作業の妨げになることもあるため、中小型の解体機のほうが適しています。

このように、解体工事では建物の構造や高さ、作業スペースなどを考慮し、適切な機械を選ぶことが重要です。そのため、幅広い規格の解体機を揃えておくことが、スムーズで安全な施工につながります。

解体重機のサイズ

重機のサイズは「小型」「中型」「大型」に分類され、建物の規模や現場の状況に応じて使い分けます。
  • 小型機:狭小地や住宅地など、スペースが限られる現場で活躍
  • 中型機〜大型機:鉄筋コンクリート造(RC造)や高層ビルなど、大規模解体で使用
  • ロングリーチ解体機:高さ20〜30mを超える建物の解体に用いる大型機
住宅街などの狭小地では、コンパクトな小型機、大型ビルや規模の大きい構造物の解体では、馬力がある中〜大型機が主流になります。

さらに、ビルの高層部を解体するときは「ロングリーチ解体機」という長大なアームを持つ大型機も存在します。

解体重機のアタッチメント

解体工事で解体重機の作業性を支えるのが、重機の『手』に当たる部分である「解体専用アタッチメント」の数々です。

アタッチメントは、用途に応じて使い分けることで、さまざまな構造物の解体や資材の分別が可能になります。
大割機

大割機は、鉄筋コンクリート造(RC造)などの大型構造物を一気に破砕するための強力なアタッチメントです。

強靭なアームでコンクリートの柱や壁をつかみ、内部の鉄筋ごと切断します。主に建物の主要構造部の解体に使用され、工期の短縮や人手の削減、安全性の向上にもつながる重要な装備です。
小割機

小割機は、大割機で破砕したコンクリートガラなどを、さらに細かく砕くためのアタッチメントです。

回収しやすいサイズにまで細分化することで、産業廃棄物の分別や再資源化がスムーズになります。環境配慮型の解体工事には欠かせないツールです。
ブレーカー

ブレーカーは、先端から強い衝撃を加えてコンクリートを破壊する「打撃型」のアタッチメントです。

特に、建物の基礎や床面、アスファルトのはつり作業(削り取り)に使用されます。頑丈で壊しにくい構造物にも対応できる反面、振動や騒音が大きいため、近隣への配慮が求められる現場では、使用時間帯の制限や防音対策が必要です。
グッラップル(フォーク)

グッラップル(フォーク)は、住宅の木造解体で使われることが多く、木材を“つかむ”ためのアタッチメントです。解体のほか金属くず、廃材の積み込み・選別作業にも最適です。

高所からの落下物や散乱した資材を安全かつ効率的に回収できるため、作業員の安全確保にも貢献します。現場の後片付けや積載作業において、非常に汎用性の高い装備です。
スケルトンバケット

スケルトンバケットは、底部に隙間(スリット)が設けられたバケット型のアタッチメントです。通常のバケットは土をすくうことが用途となりますが、 スケルトンバケットは、土砂と混在するコンクリートガラや木くずなどを、ふるい分けながら選別する目的で使用されます。

特にリサイクルや再資源化を前提とした解体現場において、資源の有効活用と廃棄物処理コストの削減に効果を発揮します。

油圧ショベルの役割

油圧ショベルは解体現場の主力機です。アームの先端に取り付けたアタッチメントを駆使し、コンクリートの破砕、鉄骨の切断、瓦礫の積込みなど、ほぼすべての工程で活躍します。

また、狭い現場でも小回りが利くモデルも多く、街中や住宅地での解体作業では、作業員や建物に機体が接触しないよう、機体後部がコンパクトな後方小旋回モデルが多く活躍します。

クレーンの役割

大型構造物や高所での作業では、クレーンが重要な役割を果たします。重い部材や設備を吊り上げて取り外すほか、上層階からの解体で解体ガラを地上に降ろす際にもクレーンが使用されます。

特に解体専用の「デリッククレーン」は、高層ビルの解体において欠かせない存在です。

木造住宅の解体工法とは?重機と手作業の使い分けを解説

木造住宅や店舗の解体では、構造材の特性や周囲の環境に配慮した工法の選定が求められます。手作業と重機を適切に使い分けることで、安全かつ効率的な解体が可能です。

重機併用工法とは|木造解体で主流の施工方法

この工法では、まず屋根や内装材などを人力で撤去し、その後に重機で柱や梁を倒していきます。木造建築では、建材が比較的軽量であるため、重機の力で一気に解体できる点がメリットです。また、粉塵や騒音の拡散を抑えるために散水や防音シートを併用するのが一般的です。

手壊し工法とは|狭小地やアスベスト処理に有効な方法

手壊し工法は、主に重機が入れない狭小地や隣接建物との距離が近い現場で採用されます。また、アスベストなどの有害物質が含まれる場合は、専門処理が必要になり、重機よりも手壊しでの作業が増えます。

手壊し工法は、騒音や振動が少ないため、近隣への迷惑を最小にできることが利点です。しかし、作業に時間がかかり、コストも高くなりがちです。そのため、大規模な解体には不向きな解体工法となります。

手作業のため安全かつ丁寧に解体を進められるほか、廃棄物の分別の制度が高く、リサイクルの観点ではメリットが大きいですが、工期や費用面を十分に考慮する必要があるでしょう。

ミンチ工法とは|禁止された危険な解体手法

解体工事の基本的な原則として、2003年に施工された「建築リサイクル法」により、昨今では、環境問題への配慮や産業廃棄物の廃棄規則などが厳しく管理されています。

かつて一部で行われていた「ミンチ工法」は、重機を用いて建物を一気に取り壊すという危険な手法です。工期も短く、解体費用を大幅に抑えられるこの方法は、現在は法律で禁止されています。

解体の際に、建材が混ざり合ってリサイクルが困難になるほか、粉塵の大量発生や構造体の崩落による事故リスクが高まるため、持続可能な解体には適していません。

重機解体・重機併用工法が多く用いられる理由

木造住宅の解体工事は、重機での解体や重機と手作業での解体を併用した解体方法が一般的です。木造解体でこの工法が主流となっている背景には、安全性と効率性のバランスがあります。

重機による解体が可能な範囲を拡大することで、作業時間の短縮と解体コストの低減につながります。加えて、解体で発生した廃棄物の適切な分別回収も可能です。

このことから、重機と手作業を組み合わせた方法は、作業速度と安全性が高いため、今では木造解体のスタンダードとなっています。

高層ビル・橋梁の解体に使われる重機と工法

鉄筋コンクリート(RC)や鉄骨鉄筋コンクリート(SRRC)構造物は、頑丈ゆえに解体も難易度が高く、専門的な重機と工法が必要です。

以下ではビルや橋の解体に使われる工法をご紹介します。

解体の主流は『圧砕機工法』

圧砕機とは、大割機を装着した重機で、コンクリートを切断・粉砕する役割を担います。鉄筋も同時に切断できるため、作業効率が非常に高く、RC造やSRRC造の解体現場ではもっとも多く用いられる工法です。

しかし、解体時には他の解体工法よりも粉塵が多く発生するため、養生シートや散水などで粉塵の飛散防止に留意する必要があります。

以前は主流だった、ブレーカーを用いた「はつり」よりも騒音や振動が少なく、分別にも適しているため、現在の鉄筋コンクリート解体では、この圧砕機工法が主流となっています。

コンクリートのはつりに用いる『ブレーカー工法』

コンクリート製の硬い床面や基礎部分の除去には、ブレーカー(油圧ハンマー)というバックホウ用アタッチメントが活躍します。

ブレーカーとは、バックホウなどの掘削機の先端に取り付ける機械のことです。チゼル(杭)を油圧で連続往復させ、打撃でコンクリートやアスファルトを破壊します。ただし、騒音や振動が大きいため、周辺環境に配慮して使用時間や防音対策が厳しく管理されています。

比較的規模の小さい現場では『転倒工法』が用いられる

転倒工法は、建物の外壁を内側に引き倒して解体する工法です。規模の小さな解体現場では、転倒工法が主に用いられており、ワイヤーロープ等を使って重機または人力で外壁を引き倒します。規模の大きい現場では、解体機械を入れて直接外壁を引き倒します。

転倒工法のメリットは、高所作業を減らせるため安全性が高く、粉塵の飛散も抑えられるため近隣への影響を最小限に抑えることができます。また、狭い作業範囲でも行えるため、狭い場所での解体にも適しています。

ただし、高い壁や構造物を倒すため、近隣住民や周囲の建物、道路、水道管などに被害を及ぼさないよう細心の注意が必要です。作業には、熟練した技術や専門知識が必要となります。

まとめ

解体工事では、単に「壊す」のではなく、「どう壊すか」が重要です。対象物の構造や築年数、周囲の建物との距離、交通量などを総合的に判断し、最適な重機と工法を選定します。

施工計画には、粉塵・振動・騒音・安全性の全てを考慮する必要があります。環境負荷を抑えた持続可能な解体が、今後ますます重要視されるでしょう。
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表層改良工法は、軟弱地盤の表層部分を固化材で安定させるシンプルな地盤改良方法です。比較的コストを抑えられる一方で、地盤の深さや種類によっては適用できないケースもあります。 表層改良工法は、重機を使ってセメント系固化材を地盤に混ぜ込み、硬い地盤を造るだけなので、「施工がしやすい」「低コスト」な点が大きな魅力です。作業手順がシンプルなため工期も短縮できるほか、コストは他工法に比べて20〜30%程度安くなる場合もあります。 他にも、地盤改良後の地中に鋼材を残さないため、将来的に土地を売却する際も障害が少なく、環境負荷が小さく済みます。 しかし、表層改良は深さ2m程度までの非常に浅い地盤しか対応できません。地盤が深く軟弱な場合には効果が不十分となり、不同沈下のリスクを残すおそれがあります。また、地盤に有機質土や高含水比の粘土が多い場合、固化材が十分に反応せず強度不足になることもありるので、地盤調査の精度が問われる工法です。 現場での具体例としては、郊外の新築住宅地で、支持層が比較的浅く、粘土質の地盤に対してや、走路工事前の地盤改良として表層改良工法が採用されることが多いです。 柱状改良工法 柱状改良工法は、地中に円柱状の固化体(主にセメント系)をつくり、建物を支える工法です。戸建てから中規模建築まで幅広く採用されており、支持層が比較的深い場合でも対応可能です。 対応できる地盤の深さが大きいため、表層改良では難しい深度5〜10mの軟弱地盤にも対応できます。円柱状の杭が地中で物荷重を分散して支えるため、安定性が高いことから、戸建住宅ではもっとも多く用いられる工法になります。 ただし、関東ローム層のような火山灰質土、粘性土を含むような土質は、改良体が固まらないというトラブルが発生しやすいです。この場合、改良体が持っていなければならない必要強度に達することができず、発現強度が一般の土より低くなります。このような特殊な土質は、専用の固化材を使用します。 ※関東ローム層:関東地方の台地や丘陵を広く覆う赤褐色の土壌。支持地盤としての安定性はあるが、配管などの撤去で地盤が乱されると強度が著しく低下します。また、盛土や土砂災害により堆積した地盤は、軟弱地盤となり、地盤沈下や土砂崩れの危険が大きいです。 大きなデメリットは、「コスト」と「撤去の難しさ」が挙げられます。戸建住宅規模でも100〜150万円ほどかかることが一般的で、表層改良より高額です。条件によっては100万を切る場合もありますが、費用は支持層が深いと高額になります。 また、固化杭は半永久的に地中に残るため、将来的に土地を売却して工場や大規模建物を建設する際に、既存杭の撤去費用が発生する場合があります。 注意点としては、地下水位が高い地域では固化材が流れやすく、十分な支持力を得られないケースがあるため、地盤条件を正確に調査した上での判断が不可欠です。 鋼管杭工法 鋼管杭工法は、鋼製の杭を地中に打ち込み、建物の荷重を支持層へ伝える工法です。 耐久性が高く、支持力が明確に確認できるため、安心度の高い改良方法として注目されています。 鋼管杭は、軟弱地盤の地中に打ち込む鋼製の杭で、耐久性が高く、工場製品として品質が安定しています。 施工可能な深さは約30メートルで、鋼管杭は支持層に直接届くことから、軟弱地盤が厚い場合でも不同沈下の心配がほとんどありません。固化材を使わないため地下水や土壌汚染リスクが少なく、環境に配慮した工法ともいえます。 確実な支持力と耐久性を誇りますが、その分コストは3工法の中でももっとも高額で、戸建住宅(30坪前後の木造二階建て住宅)でも150〜200万円が相場となります。 また、施工には専用の回転貫入機や大型重機が必要で、隣地との距離が近い狭小地や電線下では施工しにくい場合があります。 地中に鋼材が残るため、将来的に土地を農地転用する場合は、制約となる可能性もあります。都市部の埋立地や河川敷に近い宅地では、支持層が深くて軟弱層が厚いため、表層改良や柱状改良では対応できません。 鋼管杭で地盤改良を行い、建物を支えるケースが多く見られます。延床30坪規模の木造住宅で180万円程度が目安ですが、将来的な沈下リスクを最小化できるため、地盤条件が厳しいエリアでは有力な選択肢となっています。 地盤改良の選定基準 地盤改良には表層改良、柱状改良、銅管杭などさまざまな工法がありますが、どの工法を選ぶかは、地盤調査の結果で選定されます。現場によって最適な工法は異なりますが、建物の規模や重さ、地盤の強さ、支持層までの深さなど、多くの要素を考慮して選定されるのが一般的です。 建物の規模・重量 地盤改良工法を選ぶうえでまず考慮することは、建てる建物の規模と重量です。木造2階建てのような比較的軽量な住宅であれば、表層改良や柱状改良でも十分に対応できます。一方で、鉄骨造やRC造のように重量が大きな建物では、支持力の高い鋼管杭工法が求められることが多くなります。建物が大きくなるほど、地盤にかかる荷重も増えるため、安全性を優先した工法選定が必要です。 支持層までの深さ 地盤調査で確認される「支持層までの深さ」も大きな判断基準です。表層改良は2m程度まで、柱状改良は2〜8m前後までが一般的な対応範囲です。支持層が10m以上の深さにある場合は、鋼管杭工法など杭状に力を伝える工法が選ばれるのが通常です。都市部の埋立地や河川敷近くの宅地では、軟弱層が厚いため表層改良や柱状改良が使えず、必然的に鋼管杭が選択されることになります。 施工環境や敷地条件 工法の選定には、現場の環境や敷地の条件も影響します。表層改良や柱状改良は大型の撹拌機を用いるため、隣地との距離が近い狭小地や電線下では施工が難しくなることがあります。その点、鋼管杭工法は比較的コンパクトな重機で対応できるため、都市部の狭い土地でも採用されやすい工法です。ただし、騒音や振動の発生には注意が必要で、近隣環境への配慮も求められます。 地盤改良工事の流れと施工時の注意点 地盤改良工事は、「地盤調査」から始まり、調査後の結果を元に「工法選定」を行います。工法が決まれば、「施工準備」に入り、「改良施行」、「品質管理」「引き渡し」という流れで進行します。 地盤調査 地盤調査は、スウェーデン式サウンディング試験(SWS試験)やボーリング調査などによって、地盤の強さや土質を詳細に分析します。その結果を踏まえて、表層改良・柱状改良・鋼管杭など、建物に最も適した工法を選定します。選定時には、改良範囲の深さ、建物の荷重、周辺環境、そしてコスト面まで総合的に判断される点がポイントです。 施工準備 施工準備では、重機の搬入ルートを確保し、近隣への騒音や振動を抑えるための計画も重要です。特に住宅地や狭小地では、作業スペースの制約が多いため、搬入できる機材や施工時間に制限が生じやすく、工程管理が求められます。 改良施行(改良材の投入・撹拌・施工) 表層改良の場合は、固化材を混ぜ込んで地表から数メートルの土を改良します。柱状改良や鋼管杭の場合は、掘削機で地中に円柱状の改良体を造成し、支持層にしっかりと届くように施工します。このとき、施工精度を確保するために機械の制御や改良材の配合量管理が欠かせません。わずかな誤差が後の不同沈下リスクに直結するため、熟練オペレーターの技術が試される工程です。 品質確認試験 設計通りの強度が得られているかを確認するため、コアサンプルを採取したり、杭の支持力試験を行うこともあります。特に公共工事や大規模建築では、第三者による検査を経て品質が担保される仕組みが整えられています。 引き渡し 最後に施工記録の整理と引き渡しをします。ここでは、使用した材料の種類や数量、施工位置、強度試験の結果などをまとめ、建築主へ報告します。これにより、将来の建物メンテナンスや増改築時にも、地盤改良の履歴を参照できるメリットがあります。 注意点 ず「施工中の気象条件」が挙げられます。雨天時や地下水位が高い状況では、改良材の固化反応が遅れることがあり、十分な強度が発現しない恐れがあります。また、工事中に地中障害物(古い基礎やガラなど)が出てきた場合には、追加工事や設計変更が必要になるケースも少なくありません。さらに、施工後に地盤沈下が完全に防げるわけではなく、地震や地盤変動によるリスクをゼロにできるものではない点も理解しておくべきです。 地盤改良工事に使用される重機 地盤改良工事では、工法によって必要になる重機が異なります。 表層改良工法に使われる重機 表層改良工法は、地盤表面から2メートル程度の浅い部分を掘り起こし、セメント系固化材で混合・撹拌して固める工法です。 施工には、バケットに特殊な攪拌装置を取り付けたユンボ(油圧ショベル) が多く用いられます。 固化材を混ぜ込みながら土を均一に処理し、施工範囲が広い場合には、ブルドーザー を補助的に使用し、地表面の整地や材料の搬送を行います。一般的な建築現場にある汎用重機で施工可能なため、コストを抑えやすいのも特徴です。 ←ユンボに取り付けられる攪拌装置「シンキングバケット」はこちら 柱状改良工法に使われる重機 柱状改良工法では、セメント系固化材を注入しながら地中に円柱状の改良体を造成します。そのため、専用の 柱状改良機(オーガー式改良機) が必要となります。これは大型の クローラー式の改良機 で、スクリュー状のドリルを地中に回転貫入させ、固化材を混合しながら掘削と改良を同時に進める仕組みです。 施工深度は2〜8mほどで、住宅や中低層建物で多く採用されています。また、施工精度を確保するためには、改良機を安定して設置できる十分な作業スペースが必要となるため、狭小地では施工が難しい場合があります。 鋼管杭工法に使われる重機 鋼管杭工法は、鋼製の杭を支持層まで打ち込み建物を支える方法です。 施工には 杭打機(パイルドライバー) や 油圧ハンマー付きクレーン が使用されます。また、狭小地や低騒音を求められる場所では、回転圧入式の 油圧杭打機(ジャイロパイラーなど) が選ばれることもあります。 これらの重機は、騒音や振動を抑えながら杭を貫入できるため、都市部での施工に適しています。杭の長さや本数が増えると、クレーンや杭搬送用の重機も必要となり、現場の規模が大きくなる傾向があります。 まとめ 地盤改良工事は、土地状況に応じた工法選定と重機活用が大切です。費用と規模を正しく理解し、適切な施工を行うことが建物の安全と安心につながります。

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    「工事現場の効率アップ!重機の最新テクノロジー」GPS搭載重機や遠隔操作技術、ICT施工など最新技術を解説

    建設業界では深刻な人手不足や高齢化が進む中、作業効率の向上が急務となっています。 こうした課題を解決する鍵となるのが、最新の重機テクノロジーです。 GPSを搭載した重機による高精度な作業や、遠隔操作による安全性の向上、さらにICT施工による全体最適化などが注目を集めています。 本記事では、工事現場の生産性を飛躍的に高めるこれらの最新技術について、分かりやすく解説します。 無人施工で建設業の人手不足を解決!重機の最新テクノロジー 建設業界は、日本の基幹産業として重要な役割を果たします。 しかし近年は、少子高齢化に伴い労働現場での人手不足や、若者の建設業離れといった問題があり、現場の生産性向上といった課題解決が叫ばれています。 従来の方法ではこれらの課題は解決が難しいため、近年では”情報情報通信技術”を活用した、「ICT施工」や「無人施工」、「GPS」の技術を取り入れ生産性向上を図っています。 最新重機の導入で作業を効率化!未来の工事現場を解説 近年における重機の進化はすさまじく、ロボットやAI技術が次々と現場に浸透し、これまでにない技術革新が進んでいます。 これに伴い、現場の生産性や安全性が飛躍的に向上しています。 AIによる制御や5Gを活用した技術を積極的に問い入れることにより、これから自動化に向けた動きはさらに加速していくことでしょう。 重機の進化|遠隔化・自動化重機の役割 従来は現場に居なければできなかった作業が、遠隔化の技術により400km離れた場所からでも遠隔で重機を稼働させ作業を進めることができるようになりました。 この技術は人手不足に悩む、建設業界においては非常に注目されている技術です。 大規模プロジェクトやインフラ整備の現場を中心に、GPS、遠隔操作、ICT技術の導入が積極的に進められており、ダム建設や道路建設などの大規模工事において、その効果が確認されています。 これらの技術により、これまで長時間現場で行う必要があった作業を、オペレーターが現場に不在のまま複数箇所で同時に重機を稼働させることが可能になり、現場の生産性向上に大きく貢献しています。 GPS搭載重機の使用例 ドローン空撮画像の3Dデータ化と重機のGPS連動平成28年三重県伊勢市で行われた道路建設工事では、国土交通省が推奨する「i-Construction」を取り組みました。 ドローンによる現場の三次元測量を短時間で行い、結果を設計図面等の3Dモデル化することで切土や盛り土の量を自動で算出し、データをGPS搭載の重機へ送ることでほぼ自動で重機を稼働させ、現場の安全性と作業効率の向上で人手不足の解消にもつながりました。 機械位置情報システム 現場にある全ての重機にGNSSアンテナを取り付け、重機の位置を監視するシステムです。これにより位置情報をリアルタイムで画面に表示することができ、機械の運行状況なども瞬時に把握することが可能で、管理面や作業面の効率化に大きく寄与します。 建設機械メーカーのコベルコが開発した「KーDIVE®︎」と呼ばれる、重機の遠隔操作システム開発しました。操縦履歴や、遠隔重機データを活用することで、人と現場と重機をつなぎ、現場のDX化を目指しています。 GPS搭載重機の活用|重機のリモート化で得られる5つのメリット 「安全性の向上」遠隔操作・遠隔監視で危険作業を削減 重機の遠隔操作で得られるメリットとして「安全性の向上」があります。危険な場所や高所での作業を行う際は、現地で行わず離れた場所で行うためです。 「人手不足の解消」少人数オペレーションで人員と人件費を削減 重機の遠隔操作では、直接操作と、無線やネットワークを使った自動運転があります。そのため、今まで1台の重機にオペレーターが1人いましたが、遠隔操作が可能になると1人で複数台の操作も可能になり、人手不足の解消に大きな期待がもてます。 「作業の効率化」作業内容や進捗状況をデータ化して活用可能無人施工を進める上で大事なのが、測量データや、作業データをデジタルデータ化し、後工程へフィードバックすることです。遠隔操作した作業履歴は全てデータ化され遠隔操作システムにて一元管理されます。そのデータは後工程や現在工事の遅れなどを瞬時に判断が可能になるため、効率的に工事をすすめられます。また、無人施工での作業データは、今後の改善活動へつながる重要なデータになります。 「時間の無駄を削減」複数重機を操作可能|現場への移動時間を省略大規模な現場は山奥にある場合もあります。重機を遠隔操作ができれば、現場までの往復は不要になり、その分作業時間も確保できます。また現場責任者の現場巡視もリモートで可能になるため、移動の無駄を省けます。 「防犯対策の付与」GPSの位置情報で重機の盗難リスクを低減 GPSがついた重機は防犯対策にも役立ちます。あらかじめ稼働範囲と稼働時間を重機に設定しておくことで、設定外の時間や場所で稼働した場合にはすぐに、異常の通知が届くのですぐに対処可能です。そのため、現場においてあっても盗難を防ぐことが可能になります。 ICT施工の導入で現場管理を最適化 建設現場における効率化と精度向上を実現する手段として、ICT施工の導入が注目されています。 測量や重機操作、進捗管理までをデジタル化することで、作業の見える化と省力化が進み、現場全体の管理が最適化されます。 国土交通省が推進している「ICT施工」とは ICT施工は、「Information and Communication Technology(情報通信技術)」の略称です。 情報通信技術を活用し、測量から設計、施工、管理に至るまでの全工程をデジタル化する手法がICT施工です。 各工程で得られるデジタルデータを活用することで、高精度な施工を効率的に実現し、作業の見える化や自動化により、施工精度の向上と省人化が可能になります。 「マシンコントロール式」と「マシンガイダンス式」の違い ICT建設機械には、MC(マシンコントロール式)とMG(マシンガイダンス式)の2種類があります。 MCは3Dデータに基づき、半自動的に施工を行う機能です。 一方、MGは、センサーやGPSなどを搭載した建設機械や車両が現場の状況をリアルタイムに計測・解析し、その情報をもとに人が遠隔操作を行う施工方式です。 これらの技術を活用することで、効率的な施工が可能になります。 国土交通省の「i-Construction」導入現場 国土交通省が2016年に導入した「i-Construction」は、測量・設計から施工、管理に至る全プロセスにおいて情報化を前提とした新たな基準です。 河川工事、道路工事、土地改良工事など、多岐にわたる現場で導入が進んでいます。 ICT施工の全面的な活用を解説! ICT施工とは情報通信技術を利用した、次世代の施工方法です。 測量データを3次元で作成可能 ドローンや、GNSS(高精度GPS)を搭載した機械が、測量をします。 これまでトータルステーションを利用した測量よりも圧倒的に早く、そして正確に測量が可能になります。 測量で得た計測データを3D化することで、遠隔操作や無人施工が可能になります。 デジタル技術を駆使して作業をリモート化 測量で得た3Dデータを活用し、重機の作業をリモート化が可能になります。 「自動制御型」と「支援型」の2つの操縦方法があります。 自動制御型は事前にプログラムされた通りに重機が自動で作業をします。 支援型は、作業者が離れた位置からしますがICT技術による支援機能があるためより正確な施工が実現できます。 センサーやカメラを利用して事故発生を抑制 作業者の安全性向上にも大きく寄与します。 重機自体にセンサーやカメラを設置することで、作業者や重機同士の接触事故を抑制できるため、結果的に作業員の安全確保が可能になります。 自動制御で施工品質が向上 正確な測量データを送信し、重機を自動制御します。 そのため設備や配線の正確な配置と寸法精度が向上し、高品質な施工が可能になります。 作業の効率化で工期短縮、環境負荷低減に寄与 材料の無駄や廃棄物の発生を減らせるので結果的に環境負荷低減が実現します。 無人施工に関わる3つのデメリット ランニングコストが高い システム全体や重機に取り付ける部品等のコストがかかるので、これまでの重機に比べると割高になります。 自社での人材育成が必須 スキルを持った技術者が不足しています。直接重機にのって操縦するわけではなく、遠隔地からのリモートなので従来の重機を操作していたオペレーターが遠隔操作になれるまでには時間がかかります。 対応できない現場もある 狭い現場では、無人化のメリットを最大化できないため、無人化ができないと言えるでしょう。 まとめ 最新の重機テクノロジーやICT施工の導入により、建設現場の効率化と安全性を飛躍的に向上させることができます。 建設業界の課題である人手不足対策や作業の見える化にもつながり、今後の現場管理に欠かせない存在となるでしょう。 ←中古重機は、トクワールドにお任せ

    #バックホウ#油圧ショベル#操作#ユンボ

    2025/06/24

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  • 【クローラーの基礎知識】無限軌道!荒れ地で本領を発揮するクローラーとは?
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    【クローラーの基礎知識】無限軌道!荒れ地で本領を発揮するクローラーとは?

    戦車と言えば、分厚い装甲で覆われた車体に、強力な主砲を備えた砲塔を搭載した戦闘車両で、力強くクローラーで走行する姿を誰もが思い描きます。建設機械や重機もクローラーによって移動するものが大半ですが、建設機械・重機も戦車と同じく、タイヤでは走破することが困難な不整地や悪路といった特殊な地盤で活動するためにクローラーを装備しています。 この記事でわかること クローラーのメリット・デメリット クローラーの構造 クローラーの種類 荒れ地で本領を発揮するクローラーとは 無限軌道、いわゆるクローラーは、キャタピラーや履帯、トラックベルトとも呼ばれ、バックホウなどの重機の移動を支える履帯装置のことです。クローラーを採用している車両は戦車などの軍用車両のほか、建設機械や林業機械、農業機械など、不整地走行を前提としている車両機械に多く使われています。 無限軌道(クローラー)は、1801年にイギリスで発明された足回りのメカニズムで、古くから研究されていました。その後、1904年アメリカのホルト社(キャタピラー社の前身)が自社の古いトラクターにクローラーを取り付けたものを農耕用トラクターとして商品化した結果、大ヒットを納めます。これが世界で初めて登場した建設機械であると言われています。 本格的なクローラーの実用化は第一次世界大戦中に進み、1916年には西部戦線においてイギリス軍が悪路や塹壕を突破する陸戦用車両として開発した世界で初めての戦車、マークⅠがソンムの戦いに実戦投入されます。以降、クローラー車両は、軍用車両や建設機械に広く普及していきました。 クローラーで走行する重機 クローラーで自走する重機は、不整地作業に欠かせない存在であり、数多くの機種が存在します。ここからは、クローラーで走行する代表的な重機と役割をご紹介します。 バックホウ(油圧ショベル) バックホウは、工事現場などで活躍する最も一般的な建設機械の一つです。アームとバケットを用いて、地面を「掘る」、土砂を「すくう」などの動作が可能です。土砂の掘削や搬送、整地作業で使用を行う建設機械で、クローラー式バックホウは、泥地や傾斜地など足場の悪い場所でも安定して作業が可能です。バックホウには機動性が高く単独での公道走行が可能なホイール式バックホウも存在します。 ブルドーザー ブルドーザーは、履帯式トラクターの車体前部にドーザーブレードを取り付けた建設機械です。前進しながらの押土や、整地作業が得意で、土木作業の基礎工事や盛土造りなどで使用されます。不整地や軟弱地盤での活動を前提としているため、河川工事や除雪作業にも活躍します。 クローラークレーン クローラークレーンは、クレーン装置の足回りにタイヤではなくクローラーを備えた移動式クレーンです。足回りの接地面積が広いため、全周方向でも同一の吊り上げ能力があるほか、不整地でも安定性の高いクレーン作業や軟弱地盤での使用も可能です。しかし、走行速度は時速3㎞程度と低速であるため、現場への移動時は運搬用のトレーラーなどに積載して運びます。 自走式スクリーン(選別機) スクリーンは、投入した原料を振動によってふるい分ける機械です。建設現場やゴミ処理場、採掘現場で使用され、解体ガラや残土、採石、木質チップ、廃棄物内の混合物などの仕分けを行います。自走式スクリーンはクローラーで走行するため、特に採石場や鉱山といった不整地の現場で活躍します。 クローラーダンプ(不整地運搬車) クローラーダンプは、土砂や資材などを運ぶ運搬車で、キャリアダンプとも呼ばれます。通常のタイヤ式ダンプトラックでは走行が難しい不整地や軟弱な地盤でも、クローラーの広い接地面積によってスムーズに作業を進めることが可能で、ダム建設現場や林業、農業などで使用されます。スピードは遅めですが、馬力が大きいため、軟弱地盤での重量物運搬でも効果を発揮するほか、小回りが効くので林内作業や林道などの狭い道幅でも活躍します。クローラーの構造 クローラーの基本構造は、シューと呼ばれる個々のプレートがつながっており、ローラーがこれを支える仕組みです。クローラーの構造は複雑で、主に以下のようなパーツで構成されています。 クローラーの主な構成パーツ シュープレート(履板) スプロケット(起動輪) アイドラー(誘導輪) ローラー(転輪) これらのパーツに加え、クローラーのベルトは緩みやすいため、張り具合(テンション)を調整するテンション調整機構がついています。これにより、クローラーがたるんだり、過度に張ったりしないよう調整され、常に適切なテンションが保たれます。テンションが適正でないと、スムーズな移動ができなくなったり、故障の原因となります。 シュー(履板) シュープレートは地面に接するプレート状の部品で、単にシューと呼ぶ場合も多いです。シューのひとつひとつはリンクという部品で連結されており、リンクはブッシュとピンで固定されています。 帯状に連結されたシューは、クローラーベルトと呼ばれ、スプロケット、アイドラー、ローラーを覆うように取り付けられています。また、金属製とゴム製の2種類があり、それぞれの素材によって用途が異なります。 スプロケット(起動輪) クローラーを動かすためのメインの歯車で、エンジンからの動力を履帯に伝える役割を担います。通常、車体の後部(または前側)に設置され、回転することでキャタピラ全体が動きます。スプロケットにはギザギザの歯がついていて、これがシューリンクのピンに噛み合いながらベルトを引っ張って動かします。 アイドラー(誘導輪) スプロケットとは反対側に位置するホイールで、クローラーの前部(または後部)にあります。スプロケットから伝わる力でクローラーをしっかりと張り、ズレずに地面と接触できるように調整しています。アイドラーがあることで、クローラーがきちんと回転しながら地面に接触し、安定した移動が可能になります。 ローラー(転輪) クローラーのベルトを支えるために、その下部に取り付けられた小さな車輪のようなものです。主に「下部ローラー」と「上部ローラー」があり、下部ローラーはクローラーが地面にしっかり接触して安定した動きを保つため、上部ローラーはクローラーのベルトがたるまないよう支えています。このローラーがあることで、重機の重さが均等に地面に伝わり、スムーズに進むことができます。 クローラーの種類 クローラーには大きく分けて「金属製クローラー」と「ゴム製クローラー」があり、それぞれ特性や使用場所に応じて適切なタイプが選ばれます。 金属製クローラー 金属製クローラーは、耐久性や強度が高いことから、過酷な現場や岩場での使用に向いています。シュープレートが金属製なので、鋭利な石や凹凸の多い地面に強い耐性があります。 また、鉄板を用いた板が連結されることで、車両の重量を分散させながら走行するため耐久性と安定性があり、大型の建設機械に多く採用されています。しかし、金属製クローラーは走行中に騒音が発生しやすく、舗装道路や住宅地では適さない場合がある点が課題です。 ゴム製クローラー ゴム製クローラーは、主に舗装道路や都市部での使用を想定して設計されています。ゴムの柔軟性により、金属製クローラーに比べて走行音が小さく、アスファルトやコンクリートを傷つけにくいのが特徴です。また、軽量であるため、車両全体の重量を抑えることができ、燃費の向上にも寄与します。 ゴム製クローラーは、アスファルト舗装の多い道路や、土壌を痛めたくない農地、住宅地での作業など、騒音や地面への影響を抑えたい環境での使用に適しています。ただし、鋭利な石や硬い地面での使用は、ゴムが損傷しやすいため注意が必要です。 キャタピラー(CAT)は会社の登録商品、履帯は軍事用語? よく耳にする「キャタピラー」という名称ですが、米国に本拠地を置いている大手建設機械メーカーであるキャタピラー社の登録商標です。 日本では、日本建設機械工業会によって「クローラー」もしくは「無限軌道」という名称が一般的に使用されていますが、自衛隊や軍事の世界では、クローラーを「履帯」「装軌」と呼称しています。 また、履帯で走行する戦車や装甲車などの車両を「装軌車」、タイや走行の車両を「装輪車」と呼んで区分しています。 このように、装軌車(履帯)と装輪車を明確に区別するには、戦術的に重要なそれぞれのメリットデメリットが存在するからです。これは建設機械でも似たような共通点があります。 【クローラーの特徴・メリット】クローラー(装軌車)はなぜ悪路でも走行できるのか 建設機械やトラクターなどの農耕車、軍用車両は、不整地のほかに斜面や雪道などでも活動、作業できることが求められるので、クローラーの重機、車両は廃れることなくいまだに現役で活躍しています。 どうしてクローラーは悪路や不整地でも自在に走れるのでしょうか。 特徴1:接地面積が広い クローラーが悪路などの不整地を自在に走り回れる理由は、車両と地面の接地圧にあります。クローラーの場合は、タイヤよりも地面との接地面積が広いため、車重が大きな範囲に分散されます。地面に加わる圧力が分散されることで、接地圧を大きく下げることができるので、不整地や軟弱な地盤でも安定した走行ができるのです。 また、クローラーの表面には凹凸の溝があり、左右2つの広い面積を持つクローラーが地面をしっかり捉えるため、低速走行でもタイヤ車両より強い牽引力を発揮します。ブルドーザーなどにはこの牽引力を利用したアタッチメントでリッパー装置というものがありますが、岩盤掘削や伐根などに利用できます。 特徴2:作業時も高い安定性がある 接地面積が広いことのメリットはまだあります。それは安定性が高いということです。戦車や自走榴弾砲などの強力な火砲を搭載している車両の場合は、射撃時に物凄い衝撃が車体に伝わります。その衝撃を受け止めるのに履帯よりも接地面積が少ないタイヤは不利です。 履帯は、広い面で地面と設置させることで、「発射時の衝撃を広い面で吸収できる」という効果があるため、大口径の火器を安定して運用するために履帯との相性がいいのです。 これは、建設機械・重機においても同じことが言えて、タイヤで走行する大型のホイールショベルやラフタークレーンですと、作業時にアウトリガー(車両の転倒を防ぐために、車体から左右に張り出して支える装置)を展開させる必要がありますが、接地面積が広いクローラー式のバックホウやクローラークレーンは、重量物を扱う際にアウトリガーがなくても作業ができます。 特徴3:障害物、段差、溝も簡単に通過できる 一般の車両が通過できる段差(垂直障害物)の高さは、車輪の高さの約半分(高さ1mの段差を通過するには最低2mの車輪が必要)ですが、クローラー車両は、起動輪の高さ程度までは通過可能なため、障害物を容易に突破します。 タイヤに比べてクローラー車両は、障害物や段差を超えるのに車輪の高さがそれほど必要ない、ということですが、車体の高さが低いほど、戦闘時に敵に発見される可能性も下げられるというメリットがあります。なるべく車高を低くするために、現在の主力戦車は砲塔が横に広くフラットな形状のものが主流です。 加えて、大きな窪みや溝がある場合にも、軌道を常に支えているクローラーの方が簡単に通過できます。これは、山間部や災害復旧での工事や林業に使う重機にとって大きなメリットですが、戦車にとっては、塹壕や障害物を超えられるため機動力を発揮できます。 クローラーにも欠点がある!タイヤとの違いについて クローラーは、建設現場や不整地での作業に優れた性能を発揮しますが、万能ではありません。その構造や特性から、タイヤ車両と比較していくつかのデメリットが存在します。 クローラーのデメリット クローラーには次のようなデメリットが挙げられます。 公道走行ができない 燃費が悪い メンテナンスコストが高い デメリット1:公道走行ができない! 建設機械などのクローラーを装備した車両は、道路の保護と交通の安全を確保するために、公道走行を基本的に禁止としています。クローラーは舗装された道路を損傷させる可能性があるほか、建設機械などの重機は、高速での移動が困難です。 日本の道路交通法では、車両が公道を走行するためにはタイヤが装備されていることが原則となっており、クローラー車両は車両区分として特殊車両に分類されています。通常は農地や建設現場、工事現場などでの使用が前提となっているため、これに適合しません。 クローラーを装備した重機を現場や遠方に移動させる際は、輸送用のトラックやトレーラーなどを別に準備して運送する必要があります。また、必要に応じて公道を走行させる場合は、法的手続きや追加の設備(例:ゴム製カバーの装着など)を整えることが求められます。 長距離の移動が必要な場合や複数の作業現場を短時間で移動する際には、効率が低下するため、特に都市部や広い作業現場ではタイヤ式の重機が選ばれます。 デメリット2:燃費が悪い 接地面積が広いクローラー車両はタイヤで走る車両と比較して圧倒的に燃費が悪いです。建設機械は、車両自体も非常に重いですが、鉄製クローラーの場合だと重機全体の重量はさらに増します。そのため、重機には馬力、トルクに優れた大型のエンジンが必要で、走るのに必要なエネルギーが大きく、大量の燃料を消費します。 タイヤの転がり抵抗は、クローラーの摩擦力よりも小さいので、燃費向上にもつながります。 デメリット3:メンテナンスコストが高い クローラーは走行時に地面からの振動や衝撃を車体全体に伝えやすく、直接駆動軸に影響を与えます。この振動や衝撃は、特に車軸周辺に大きな負荷をかけるため、衝撃荷重を想定した堅牢な設計が求められるわけですが、クローラーは1箇所でも小さなひび割れが入ると切れたりする可能性もあります。 クローラーが切れると、走行不能になり再度走れるようになるには大きな手間だけでなく、修理コストが高額になる可能性があります。また、交換後のクローラーは産業廃棄物として扱われるため、一般ゴミとして廃棄することができません。そのため、クローラーは処分に費用がかかります。 エアータイヤの場合は、内部に空気が入っているためクッション性があります。これは、地面から伝わる振動や衝撃を受け止めるサスペンションの効果を果たします。クローラーは、その構造上、タイヤ車両よりも多くの可動部品を含んでおり、定期的な点検や部品交換が必要ということを理解しておきましょう。 建設機械も兵器もタイヤ走行の重機がトレンド? 工事現場などで使用されるバックホウの多くは足回りがクローラーになっていますが、都市部ではタイヤで走行するバックホウを良く見かけます。建設機械といえば、不整地でも安定した走破性と作業性を発揮できるクローラー走行の重機が一般的でした。しかし、近年ではタイヤ走行のホイール式重機の需要が高まっています。 その理由は、現場ニーズの変化と維持・運用コストにあると考えられます。 国土交通省によると、高度経済成長期以降に整備された道路橋、トンネル、下水道、港湾等などは、今後20年間に渡って建設後50年を経過するインフラ設備の割合が、加速的に高くなると見込んでおり、一斉に老朽化するインフラを戦略的に維持管理・更新することが求められています。※引用:国土交通省(インフラメンテナンス情報)より 高度経済成長期には、山間部を切り開いた高速道路建設やダム建設、宅地造成、都市化に伴うビル建設や区画整備といった大規模工事の入札が多くありました。そのため、不整地におけるクローラー重機の需要はピークを迎えていました。しかし、インフラの老朽化が課題となっている現代では、大規模プロジェクトを受け持つのは一部の大手企業で、その他の中小企業は複数の小規模の工事を受け持っていることが一般的です。 そのため、機動性があり、公道での単独走行、ある程度の長距離走行が可能なホイール式(タイヤ)建設機械の需要が伸びています。また、部品の価格や燃料の価格高騰もホイール式建設機械の普及を後押ししていると推察できます。 タイヤ車両は、クローラー車両よりも燃費、メンテナンスコストなどの維持費にも優れ、現場への移動に回送用のトラックを別途用意する必要がないため、輸送コストもかかりません。 よって、クローラー車両よりも軽量で、若干の不整地、悪路面であればクローラーより高速移動が可能で振動が少なく故障率が低いタイヤ走行の建設機械に、昨今は注目が集まっています。軍事業界でも似たような思想があり、履帯ではなく装輪式を採用したタイプの車両を積極的に運用する流れが見られています。 ※陸上自衛隊が装備する16式機動戦闘車(通称:MCV)。優れた空輸性、路上機動性を有し、主武装に105㎜砲を備えた装輪戦闘車両。即応機動連隊や戦闘偵察大隊に配備され、身軽さを活かした機動展開や威力偵察など戦車の役割を一部代替する。 重機も兵器も、故障のリスクが低く燃費が良いことは長時間の任務(作業)にも優れるという点は大きなメリットになるでしょう。しかし、国土のほとんどに山林と河川が広がり、積雪が伴う日本国内では、悪路や過酷な作業環境でも活動できるクローラー重機が廃れることはありません。 まとめ クローラーは、その特性を理解し、適切な場面で使用することで最大限の効果を発揮します。デメリットを踏まえた上で、タイヤ式との使い分けを検討することが、作業効率を向上させる鍵となるでしょう。

    #ユンボ#バックホー#バックホウ

    2025/01/30

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