クレーン
2023/09/21
1,310
カニクレーンナックルブームは最先端の建設機械!その特徴を徹底解説!
下部走行体はゴムクローターで、走行中の全幅は590ミリ~1,390ミリ、一般的な重機が進入していけない現場へ到着すると4本のアウトリガーを張り出して接地します。
狭く不安定な場所での墓石や庭石の据え付け、周りに電線が張り巡らされた変電所、スペースが限られたトンネルや地下鉄の管工事で荷を吊って揚げて運搬します。
さらに今後は、都市中心部の建築物密集地や高層ビルでの維持・修繕工事などでの活躍が期待されています。
一方、ナックルブームクレーン(屈曲式クレーン)は、クレーン分野で非常に注目を集めています。
ナックルブームクレーンは、ウインチを持たずブームの先端にフックをつけて荷を吊り上げます。ブームを高く立ち上げ、フックを吊り降ろす作業が必要ありません。
最短距離で、すばやく荷へアプローチできるのが特徴です。吊り上げ後も荷を大きく揺らすことなく移動させることができます。
また油圧アタッチメントのパレットフォークやグラップルを装着させれば玉掛け作業も必要ないです。
以上のような特徴をもつカニクレーンとナックルブームクレーンを組み合わせた、カニクレーンナックルブームは、最先端の建設機械として期待されています。
この記事では、カニクレーンナックルブームについて解説します。
カニクレーンナックルブーム(電動併用仕様)を解説
MK1033CW-1について、構成、機能、特徴、能力、標準装備・オプションのポイントで解説します。
【ナックルブームクレーン】MK1033CW-1の構成
- 走行台車部
走行台車部は、走行装置(ゴムクローラー)、エンジン装置、走行とクレーンの操作装置などで構成されています。 - クレーン部
クレーン部は、メインブームの起伏装置、ジブの伸縮・起伏装置、旋回装置、フックブロック(1本掛フック)、ウインチおよびアウトリガーの装置などで構成されています。 - 安全装置
MK1033CW-1の安全装置は、クレーンの安全作業はもちろん、作業の効率化にも有効な装置です。
フック巻過警報・過巻下警報・自動停止装置、非常停止ボタン、角度指示計、油圧安全弁、油圧自動ロック装置、玉掛けロープ外れ止め、三色灯、警報ブザー、水準器が装備されています。
また横転警報装置、アウトリガー安全装置、ブーム変位検出装置、旋回規制装置などが装備されている安全性の高い機械です。
【ナックルブームクレーン】MK1033CW-1の機能
- 走行台車部
走行台車部は、走行姿勢状態(クレーンとアウトリガーを格納した状態)での全幅750ミリで、非常にコンパクトな設計になっています。そのため一般的な建設機械が入り込めないような狭い場所への進入が可能です。
2本の走行レバーの操作だけで、クローラーの前進、後進、左右への進路変更ができます。 - クレーン部
クレーン部は、不陸や勾配のあるような不整地や狭所でのクレーン作業を可能にする屈折式アウトリガーを採用しています。
ブームの伸縮・起伏・旋回動作と、ウインチ装置の作動によりフックを上下移動させて吊り荷を移動させることができます。(定格総荷重内及び作業範囲内)
メインブームとジブの角度や長さを変えることで、多様なポジションをつくることが可能で、付属の固定式フックとなるフィックスドフックと付け替えて使用することもできます。
【ナックルブームクレーン】MK1033CW-1の特徴
- 効率よく奥まで水平にリーチできる
ジブを水平に伸ばすことができるため、工場や倉庫などで効率よく荷台の奥まで荷を移動させることができます。 - 屈折式ブームだから効率的にリーチできる
屈折式ブームであるため、必要以上にブームを立ち上げたり、長くフックを吊り下ろしたりする作業の必要がなく効率的な作業が可能です。 - オプションで脱着式電動ユニットが搭載可能
オプションとなりますが、コンパクト(全幅547ミリ)で脱着式の電動ユニットが搭載可能です。屋内や住宅地の現場で、排ガスの規制や静粛性が求められる場合に有効です。 - 懐が広いので障害物を乗り越えて作業できる
関節を曲げて深い懐(ふところ)をつくり出せるため、長い荷の積み込みが容易になり、障害物を乗り越えての作業もできます。 - マルチアングルアウトリガーだから接地しやすい
マルチアングルアウトリガーを装備したため、不陸や支障物など現場状況に応じて、最適な位置での接地面の選択の幅が広がりました。
【ナックルブームクレーン】MK1033CW-1の能力
クレーン容量は、一本掛けフック使用時で0.82トン×2.3mです。最大作業半径は9.73mで、最大地上揚程は10.47mになります。
附属のフィックスドフック使用時は、クレーン容量0.995トン×1.3mになります。最大作業半径は9.9mで、最大地上揚程は11.3mです。
新型マルチモニターで情報を一元管理できます。管理情報項目は、モーメントリミッター情報、クレーン/アウトリガーインターロック情報、クレーン作業記憶機能、エラー記録表示、水準器などです。また特許出願中の高機能モーメントリミッターも装備しています。
その他としては、フック格納ブラケット、マルチアウトリガーポジション(各張り出し角度は6パターン)、オプションで自己脱着式電動切替仕様もあります。
オプションの電動機は、三相誘導電動機で5.5kw、200.220Vで起動方式はインバータとなっています。
ラジコンは、扱いやすく高性能なパドルレバー式です。
【ナックルブームクレーン】 MK1033CW-1の標準装備・オプション
<標準装備>
- パドルレバー式ラジコン
- 1本掛フック
- フィックスドフック
- ウインチ
- マルチアウトリガーポジション
- 水準器
- マルチモニター
- クレーン/アウトリガーインターロック
- 傾斜警報
- クレーン作業履歴
<オプション>
- 脱着式電動ユニット
- 白ゴムクローラー
- 指定色(機体)
MK1033CW-1は、メーカーの前田製作所の技術を存分に積み込んだ仕様と言えるでしょう。
カニクレーンナックルブーム導入のメリット
このようにカニクレーンナックルブームの導入には大きなメリットがあります。
カニクレーンとナックルブームのメリットをそれぞれ紹介し、この二つを組み合わせたカニクレーンナックルブームがどのような現場で活躍しているかを解説します。
カニクレーンのメリット
一番の特徴は、とにかくコンパクトな設計であることで、走行中の全幅は590ミリ~1,390ミリです。利用頻度の高い1トン吊り~2.8トン吊りで全幅は600~800ミリとなっています。
屋内のエレベーターに載せて運んだり、トラックの荷台のわずかなスペースに積んだりできます。また分割して運ぶことができる仕様のものもあり、ロープウェイやヘリコプターでの現場搬入も可能です。
現場に到着すると、4本のアウトリガーを張り出して接地します。この作業時のみ展開する4本のアウトリガーは、現場接地面の広さ、支障物や段差に応じて張り出しの角度や長さを選ぶことができます。
ナックルブームのメリット
ナックルブームは、ウインチがなくブームの先端にフックを取り付けて荷を吊り上げることができるので、ブームを高く立ち上げて、長くフックを降ろす作業が必要ありません。
直線的にすばやく荷へアプローチできる上に、吊り上げ後も、吊り荷を大きく揺らすことなく移動が可能です。
油圧アタッチメントのパレットフォークやグラップルを装着させれば、玉掛け作業が無くなるだけでなく、土砂の積込み作業など幅広い用途での使用が可能になります。
ナックルブームのクレーンは、海外では車載クレーンの主流となっています。
どのような現場で活躍できるか
ブームとジブを駆使すれば、障害物を越えての作業や作業棚の奥へのアプローチができて、エンジンモーターと電動の併用であれば排気ガスを出さずに作業できるからです。
以下に、活躍している現場をまとめました。
- 高層ビルの新築や修繕の工事
- 屋上での荷揚げや吊り荷、運搬
- 墓石や庭石、石碑の据え付け作業
- 周りに電線が張り巡らされた変電所
- 航空産業での整備施設内での作業
- 美術館や博物館での据え付け作業
- アクセスに制限のある室内での作業
- スペースが限られたトンネルや地下鉄
- プラント、工場内でのメンテナンスや運搬
- 住宅の中庭や外壁工事での資材の吊り作業
カニクレーンナックルブームを使用すれば、これまでクレーンを使用できなかった、さまざまな場面での建設機械の導入が可能になります。
カニクレーンナックルブームの運転に必要な資格
運転に必要な資格は、下記のいずれかが必要です。
また玉掛け作業にも資格が必要です。
それぞれについて解説します。
移動式クレーン運転士免許
移動式クレーン運転士免許を取得するには、全国7か所にある「安全衛生技術センター」で実施される学科試験と実技試験に合格することが必要です。以下のサイトを検索すると詳細がわかります。
公益財団法人安全衛生技術試験協会
https://www.exam.or.jp/
免除資格が全くない方は、まず学科12時間・実技9時間の講習を受講します。その後修了試験を受けて合格すると、修了証明書が発行されます。
修了証明書は1年間有効で、その期間で学科試験(期間内であれば何回でも受験できる)に合格すると、合格通知書を受けとることができます。修了証明書と学科試験の合格通知を労働局に郵送すると、免許証が交付郵送されるという流れです。
免除資格が全くない方の教習日数は概ね6日間、費用は14万円程度かかります。夜間に講習可能なセンターもありますが、費用は割高(2割程度)になります。
詳しくは、お近くの安全衛生技術センターに問い合わせてください。
小型移動式クレーン運転技能講習
技能講習は、各地域にある登録教習機関で受講することができます。以下のサイトで、居住地に近い登録教習機関を簡単に検索することが可能です。
厚労省|登録教習機関一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei05.html
受講に必要な費用や時間は、保有している資格や実務経験で違います。
クレーンなどの建設機械の資格や実務経験がまったくない場合は、20時間(3日間)の受講が必要で、費用は54,000円程度になります。
お近くの登録教習機関に、事前に問い合わせて確認しておくと安心です。
移動式クレーン運転業務に関する特別教育
特別教育は事業者が主体となって、業務に就かせる労働者に対して行うものですが、実際には登録教習機関で受講していることがほとんどです。以下のサイトで居住地に近い登録教習機関を簡単に検索することができます。
厚労省|登録教習機関一覧
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/anzen/anzeneisei05.html
学科は9時間、実技は4時間が目安となっています。費用はテキスト代込みで12,000円程度です。
移動式クレーン運転業務に関する特別教育は、登録教習機関によっては実施していないこともあるので、必ず事前に問い合わせるようにしましょう。
移動式クレーンの種類と特徴
クレーンは、原動機を内蔵し不特定の場所へ移動できる「移動式クレーン」と不特定の場所へ移動できないクレーンに分けることができます。
この移動式クレーンの中で、一般的な建設機械では狭くて進入できない場所や、通常のクレーン作業が難しい狭所や不整地などでの作業を得意とするのがカニクレーンです。
さらにこのカニクレーンにナックルブームを組合わせて、作業の利便性を格段に向上させたのが、カニクレーンナックルブームということになります。
移動式クレーンは、建築・土木など建設業の現場に置いて欠かすことができないものです。また最近では、移動式クレーンにナックルブームを装備したものも登場しています。
カニクレーンナックルブームと他の移動式クレーンとの違いを浮き彫りにするため、移動式クレーンの種類と特徴を説明します。
トラッククレーン
クレーン作業の巻上げ・巻下げ、ジブの起伏・伸縮・旋回などの作動については、大型機種では走行用と作業用とで原動機が別々のものが多いです。
比較的小型の機種では、走行用原動機からPトンO(油圧変換の仕組み)を介し油圧装置によりクレーン装置の作動を行っています。
トラッククレーンは機動性、操作性に富み、小型から大型まで建設現場で幅広く使用されています。
トラック搭載型クレーン
クレーン部分は、トラックのエンジンの動力を利用して発生させた油圧で作動し、3~7段のブームを持つことが多いです。ブームの構造により、伸縮ブームと屈折ブーム(ナックルブーム)の2種類あります。
吊り上げ荷重は0.49~4.9トンのものが多く、トラックのサイズも小キャブから大型まで幅広いです。
トラッククレーンは、一般的にユニックと呼ばれることが多いです。ただユニックは、古河ユニックの商品名ですから、正式にはトラッククレーンと呼ぶのがふさわしいかもしれません。
積載型トラッククレーン
地下駐車場など、高さ制限のある建設現場で活躍しており、一定数は常に流通しています。
車両の全高が増加しないようにブームを格納することができて、車両前方側のクレーン作業ではブームを水平角まで倒伏して作業範囲を拡大することも可能です。
右側アウトリガー垂直張出式では最大でも2m幅以内で張出が収まり、なおかつ全方位に作業範囲を展開できるものが登場しています。またブームを高く上げることで懐(フトコロ)部の荷の干渉をクリアできるようになっています。
レッカー型トラッククレーン
通常のトラッククレーンと異なり、ジブ長さは通常10メートル程度しかありません。シャーシー後部に事故車けん引用のピントルフック、ウインチなどが装備されています。
このため建設現場での使用には向かず、一般に交通事故車、故障車等の救難作業または建屋内の機械設備などの据付工事などに使用されることが多いです。
オールテレーンクレーン
トラッククレーンのシャーシーは、後輪駆動の前輪操舵が一般的ですが、オールテレーンクレーンは多輪駆動の多軸操舵です。このシャーシー構造が不整地での走行能力を高めています。
大型なものが多く、走行とクレーン操作で運転席が分かれているのが、ラフタークレーンとの違いです。国内最大級のオールテレーンクレーンは、吊り上げ荷重700トンですが、7軸14輪のため安定性と走行性に富んでいます。
橋梁や高速道路、高層ビル建設など大規模工事で使用されることが多いです。最近では、新素材による軽量化がすすめられています。
ラフテレーンクレーン
大型ですが、全輪駆動のため不整地や比較的軟弱な地盤でも走行できるのが特徴です。ラフテレーン(rough terrain)とは、英語で「不整地」を意味しています。
最大つり上げ荷重は比較的少なく、100トン未満のものがほとんどです。また最高速度が時速50kmを越えない設定のため、長距離走行には向いていないといえるでしょう。
解体工事や基礎工事、荷役作業など応用範囲が広く、高所がからむさまざまな現場で、重量物の吊り上げ、運搬、移設を行います。
建て方作業でも活躍します。一般住宅の土台の据え付けから柱や梁の設置や棟上げ、架空線越しの屋根の建て方、繁華街の看板やネオンサイの建て方・交換作業も可能です。
クローラークレーン
クローラーは、接地面積がタイヤ広いため、不整地や軟弱地盤上での走行性が高いです。
小型のクローラークレーンの中には、アウトリガーを装備して安定性を高めている機種もあります。
超大型(吊上能力450t~600t以上)はプラントや風力発電、大型(吊上能力100t~300t程度)は地盤改良工事や基礎工事などが主な作業場所です。
中・小型(吊上能力10t~75t)は、比較的狭い道路での工事、石組や石工事、造園工事、建屋内での機械組立などに使用されています。
- カニクレーンナックルブーム「MK1033CW-1」について
- カニクレーンナックルブーム導入のメリット
- カニクレーンナックルブームの運転に必要な資格
- その他の移動式クレーンの種類と特徴について
この記事が、カニクレーンナックルブームの周知につながり、導入を検討する方にとって少しでも役に立つ記事になっていれば幸いです。