ユンボ
2022/06/14
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ROPS?FOPSとは?ユンボに起こりがちな事故と保護機構について
ご安全に!工事現場の作業中に多発する重機やユンボによる事故
現場作業を支える建設重機は必要不可欠な存在です。しかし、配慮を怠るとたちまち重大な労働災害へつながってしまいます。
作業員の不注意や不安全による重機事故は依然として多発しているのが現状です。
重機はその大きさや重量が人の何倍もあり、車体からの死角も多いため、少しでも重機と接触すれば体の小さな人間にとってその衝撃は甚大なダメージとなります。
最悪、重機との接触による死亡事故になってしまうことも少なくありません。
それでは、重機関係の事故が全国でどのくらい発生しているかご存じですか?下にあるデータは、政府が発表している資料です。
また、平成26年の国交省直轄工事における事故発生状況ではユンボによる事故が55.7%と最多で、合図・確認の不徹底による機械前後移動時の対人接触や誤作動、横転事故などが発生しています。
資料を見ると過去と現在、いずれにせよユンボなどの建設重機による事故の割合が多いことがお分かりかいただけるかと思います。
では何故こんなにも重機による事故が多発しているのでしょうか。また、ユンボの怪我や死亡を防止するための保護機構についてはご存じですか。
今回はユンボの保護機構についての説明と重機横転事故により会社が受けるダメージ、重機事故多発の原因と対策を解説していきます。
ユンボに備わっている保護機構について
そのため、ユンボには事故を想定し、運転者を保護するための保護機構が備わっている機械があります。
中にはユンボの資格を取得したばかりで専門的な用語についてあまり詳しくないと、いう方も多いのではないでしょうか。
また、少しでも安全性に優れたユンボやミニユンボを購入したいと検討しているが、どの機械を選べばいいのかわからないという方もいらっしゃると思います。
そこで、まずは運転者を保護することを目的に規格化されている保護機構「ROPS」や「FOPS」について知っておきましょう。
「ROPS」「TOPS」とその開発経緯
国土の大半が山間部と森林地帯である日本では、高度経済成長期を迎え、高層道路やダム建設などの開発工事が急激に増加しました。
ROPSが規格化される以前の油圧ショベルの転倒時保護要求規格は6t未満のスイング式フロント構造のミニショベルに横転時保護機構「TOPS(Tip-over protection structure)」が規格化されていましたが、6tを超えるユンボには備わっていませんでした。
これは、比較的車幅が小さく、重心が高くなるミニユンボ(運動質量6t以下の油圧ショベル)が横転(90°の横倒し)しやすいとされたためです。
また、横転時保護機能であるTOPSは360°転がり落ちる転倒には耐えられないとされていたため、転倒事故時に機械が傾き始めるとオペレーターが運転室の外に退避し、地面に降りた途端に機械がその上に覆いかぶさるという痛ましい事故が起きました。
しかし、運転室は原型を留めており、オペレーターがシートベルトしたまま中に留まっていれば助かったかもしれない例もあり、転倒しても運転席空間が確保できているような相当の強度をもった運転席であれば、オペレーターは安心して室内に止まることができたと考えられ規格化されたのが転倒時保護機構であるROPSというわけです。
・「FOPS」とは
落下物からオペレーターを適切に保護する目的で装着されるのが落下物保護構造物「FOPS(Falling Object Protective Structures)」です。
労働安全衛生規則 第153条 第1項(ヘッドガード)では、「事業者は、落石などの落下物により危険が生ずる恐れのある場所でユンボなどの車両系建設機械を使用するときは、当該車両系建設機械に強固なヘッドガードを備えなければならない」と定められています。
重機横転事故がもたらす建設会社へのダメージ
そのような重大事故が発生した場合、損害賠償が生じる可能性が大きく、当然ながら施工会社に多額の賠償請求が求められることになります。
さらに、ユンボなどの重機自体が非常に高額な機械のため、借り物のだった場合は、リース会社に弁償、そして自社だった場合は、買い替えることにもなりかねません。そうなれば、賠償額も膨れ上がります。
・損害賠償責任以外にも刑事上責任や行政責任が生じることも
ニュースや新聞などのメディアに企業名が公表され、企業イメージが大きく低下することもあります。
それでは具体的にどのような刑事上・行政上の責任が発生する可能性があるのでしょうか?
・安全労働義務違反
ユンボ転倒などによる大事故の場合は、安全労働法で定められている安全管理体制の整備や労働者の危険・健康障害を防止するための措置などの義務に違反している可能性が高いです。
違反が確定した場合は労働安全法違反として、刑事処分を受ける可能性があります。
さらに労働安全衛生法には「両罰規定」というものがあり、違反行為を行った労働者だけでなく、会社も罰則(罰金刑)を受けることとなります。
・業務上過失致死傷罪
5年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金が課せられますが、両罰規定はないため会社自身が処罰を受けることはありません。
・労働基準法違反
この場合には労働基準法違反として、被災労働者の上司などが処罰対象になる可能性があり、6ヶ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課せられます。
また、労働基準法違反には両罰規定があるため、会社も処罰(罰金刑)される可能性があります。
・行政上の責任
この是正勧告に従わないと、最悪の場合、逮捕や書類送検されるケースもあります。
また悪質な事案の場合は1年以内の期間を定めて、業務停止を命令可能なことが定められています。
労働基準法や労働安全衛生法の違反が、営業停止命令にまで発展する可能性もあるので注意が必要です。
ユンボによる事故対策について
単純なことですが、作業員、誘導員とオペレーターの声掛けやコミュニケーションが重要であり、それを徹底していれば事故の半分以上は未然に防止できます。
特に作業員や誘導員はオペレーターの視認任せで油断する傾向にあり、ユンボの旋回操作中による接触事故よりも、重機の前進や後進による事故発生数が大きく増加しています。ここからわかるように声かけ、合図不足などによる油断で生じた事故ということが、顕著に表れています。
近年は「安全の見える化・聞こえる化」の推進として作業員への注意喚起やICT技術による接触防止システムの普及推進や旋回時、前進、後進時の接触防止対策対策としてセンサーなどの開発も進んでいるようです。
ユンボをはじめとした建設機械には様々な安全機能が備わっており、安全に関する技術や規定は強化されつつあります。
・最も平均年齢が高齢化している業界
現場での問題以外に考えられるもうひとつの問題が、高齢化する建設業界の現状が背景にあるということです。
冒頭で参考資料として紹介した安全啓発リーフレットによると60歳以上の死亡数が最多であり、次いで50代、40代、30代の順になっています。
10代の死亡者の割合は、業界者数の減少もあって近年減少傾向の結果を示していました。
一般的には、年齢が高いと経験が豊富ですが体力低下や俊敏性の衰えが要因となり、建設現場における事故での死傷者数や死亡者、業界全体における事故の割合が高くなっているのです。
そして、建設現場には、かつて若手を指導するベテランが数多く存在していましたが、現在は建設業界全体が高齢化しており、危険を伝え適切に叱るOJT(職場内教育)は失われつつあります。
このままでは、適切な現場管理や安全管理ができないまま育った作業員が現場監督になった結果、さらなる事故が発生してしまうということの多発が懸念されています。
現場での安全対策以外にも、高齢化が進む業界全体の現状を改善することが根本的な問題解決なることでしょう。
まとめ
また、転落や落下物による危険性に晒される作業が多いユンボですが、転倒時保護機構である「ROPS」や落下物保護構造物の「FOPS」いった安全に関わる機能も備わっています。
特に重機による横転事故は、周囲を巻き込みやすく、場合によっては経営者が刑事責任に問われ懲役刑になってしまうこともあります。
重機による事故や死亡者をこれ以上出さないためにも、現場作業員のひとりひとりが安全に対する知識とプロ意識をしっかり持ち、基本的なことを遵守して作業に臨むことが大切です。